野良イモリ博士のblog

社会人学生野良イモリが大学のことや考えていることを発信します。

博士課程修了者・満期退学者の進路動向について

 

 

博士村という話がYouTube上に上がっています

 


【修正版】 創作童話 博士が100人いる村

 これは,文部科学省の「学校基本調査」という調査における博士課程修了者および博士課程満期取得退学者の進路動向で博士課程を出た人のその後のことが明らかにされているのですが,それを簡単な話に作り替えてできた話です。

 しかし,この「学校基本調査」では,大学によって「ポストドクター」いわゆるポスドクの扱いが異なっていることがのちにわかっていて,ポスドクが正規の就業者に含まれていたり一時的な仕事に就いた者に含まれていたことがわかったりと,情報の取り方に問題があったことがわかっています。

 

はじめに

 博士課程修了者の進路動向については,実は「学校基本調査」以外にも明らかにされています。今回はそのお話をします。

www.mext.go.jp

 このデータを引用して,博士課程修了者の進路状況について考えてみます。

 なお,この調査は「修了者」と表記していますが,実際には博士課程満期退学者,要は博士課程を修了していない人が含まれています。加えて,修了者の就業状況の数字には社会人学生が含まれています。

 つまり,すでに正規の職についている社会人学生は,正規の職に就いた者として扱われているということです。博士課程生のうち社会人学生の割合は高く,正規の職に就いた者の割合は一般学生よりも社会人学生のほうが高いことがわかっていますので,社会人学生が良い方向に情報を上乗せしていることになります。

 

学卒と修士の進路状況

 学部卒生,修士課程修了生の正規の職についた人の割合はおおよそ75%であることがわかっています。それぞれ,進学者はおよそ10%です。したがって,就職希望者の大半が正規雇用の職についていることがわかっています。

 これを学士市,修士町みたいな言い方をすると

  • 75人は正社員か公務員です
  • 10人は進学します
  • 正規の職じゃない人,一時的な仕事に就いた人は5人です
  • 7人は無職です
  • 3人は不明です

 後述する博士村と比較すると,かなり安定していると思います。


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博士の進路状況

 文部科学省の学校基本調査によると,博士課程修了者等のうち

  • 正規の職に就いた者は54.8%
  • 正規の職員ではない就業者は14.3%
  • 一時的な職に就いた者は5.4%
  • 就職も進学もしていない者は17.3%
  • 不明な人は7.6%
  • 進学者は0.8% です。

 博士課程修了者の進路動向調査では,

  • 大学等への就業は24%
  • 企業は17.8%
  • その他の就業先は9.8%(公務員や民間の病院と思われる)
  • 公的研究機関は2.34%
  • 高等教育機関以外の学校は3.42%
  • 就業しているが不明な人は1.9%
  • ポスドクは17.9%
  • 非常勤講師・非常勤職員は2.9%
  • 無給の研究員は1.2%
  • 研究生など非正規の学生は1.3%
  • アルバイトは1.1%
  • 外国人留学生の帰国者は2.1%
  • 進路未決定者は1.9%
  • 不明な人は7.1% です。

 なお社会人学生に限定すると86.2%が就業者になっているので,社会人学生が明らかに良い方向に情報を上乗せしていることがわかります。

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博士村的な言い方をしてみる

 博士が100人いたとすると,

  • 25人は大学で働きます
  • 18人は会社員です
  • 10人は公務員です
  • 3人は公的研究機関に行きます
  • 4人は小中高校の先生です
  • 就職したけどどこに就職したかがわからない人は3人です
  • 18人はポスドクです
  • 9人は進路が決まっていないか,非常勤講師,無給の研究員,アルバイトです
  • 2人は母国に帰国します
  • 7人は不明です
  • 1人は進学します

 こんな雰囲気になります。

 冒頭の博士村より良いのは,この調査の時期が11月だからです。学校基本調査は5月ですので,5月時点より進路が決まった人が増えているからといえると思いますが,それでも大卒や修士と比べると圧倒的に状況は悪いです。

 この調査では先の学校基本調査とは異なり非正規の会社等,一時的な職に就いた人の割合はわかりません。「大学等」も任期付きの職なのか無期雇用なのかは明らかになっていませんが,実際は無期雇用に限定するとかなり減るものと思われます。

 

感想

 博士の就業者のうちのお医者さんの割合は高いです。医学系の博士課程の修了者は「大学等」と「その他就業先」が多いので,おそらくお医者さんは「その他の就業先」と「大学等」とに分かれていると思います。

 なお,冒頭にも言いましたが修了者の30%ほどは社会人学生ですので,彼ら彼女らの多くが「民間企業」や「その他就業先」に割り振られていると思います。

 そう思うと,かなり厳しいです。

 このデータから見てわかるように,研究職に就こうとしてもなかなか難しい状況にあります。こだわらなければ就業先はあるという状況にも見えます。世間で噂されている情報よりは,実際の就業状況は良いということはできます。したがって世間の噂はマイナスな方向に振れているとも言えますが,不安定といえるポスドクですら,ポスドクになれているだけましともいえる状況であり,厳しい状況であることは事実かと思います。

 しかし大学に就職している人が意外に多いですね(24%を多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれでしょうが)。もっと少ないかと思いました。彼らも任期が更新されるのか,それとも切られるのかはわかりません。しかし,大学に行けているだけ良いということはできます。

 いばらの道というのは間違いないですね。