社会人学生野良イモリのblog

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博士論文の草稿の流れー修士論文と比較してー

 公聴会まであと2週間を切りました。

 個人的には,コロナの状況が悪化しつつあるような気がしているので,公聴会を行うことができるのか,心配でいます。

 ちなみに前期修了する人の人数が少ないためか(博士課程は後期修了でも少ないのですが),修士論文発表会と抱き合わせの博士論文発表会になる予定です。修士論文は発表15分,質疑応答5分。博士論文は発表30分,質疑応答10分です。扱いの違いがものすごいです。修士の方から発表なので,僕は2番目になります。

 10分の質疑応答の間にどんな質問が来るのか,ハラハラドキドキします。(質問への対応も考えておかなければなりませんね)

 

 博士論文のことって調べてもあまり情報が出てきません。そこで今回は,博士論文の草稿について,修士論文と比較ながらお話しようと思います。

 

 作る過程

 博士論文の草稿は,3月から始めました。8月で終わる予定です。博士論文の草稿を始めてから完成まで,6か月を費やすことになります。

 これが修士論文の場合,僕は1か月半ほどしかかけていませんので,学位論文に書ける労力は比較になりません。

 このような違いが出る要素は,いくつか考えることができます。

  1. 論展開の仕方が重要(査読論文を出すことによる違い)
  2. 論理性のチェック
  3. 要旨,スライドと言い方を一致させなければならない(博士論文予備審査会,副査の先生のご指導を経て内容が変化していく)

1.論展開の仕方が重要

 この作業は初期の段階でやります。

 博士論文という学位論文の中で,どのような章構成をして,どのような論展開にするのかということがとても重要になります。一つのストーリーを仕上げるようなイメージです。

 修士論文は査読論文を必要としません。査読に出している論文があっても,それが学位論文という形になることはありません。したがって,以下のような論展開を意識する必要もありません。極端な言い方をすれば,ただ書く,それだけ。

 博士論文の場合,査読論文をもとに構成するのが原則になりますので,2つの査読論文を束ねるような形で序章と最終章を展開する必要があります。

 例えば,2つの査読論文をもとにして博士論文を作成します。その2つの査読論文という「方法」「結果」「考察」は既にあるわけです。序章では,その2つの査読論文の「方法」を設定するに至った背景や展開を,論理的に展開しなければなりません。そして,最終章では,2つの査読論文を束ねる総合考察をする必要があります。序章に記載した目的が,最終章では果たされていなければなりません。

 「方法」「結果」「考察」という中間部分が既にある状態で,矛盾がないように展開しなければなりません。そして,「〇〇という課題はあったが私は調べなかった」ということでは通用しませんし,そういう指摘があった場合に,そこに着目しなかった理由が述べられないといけません(というか,口頭でそのような質問が来る時点でアウトのような気がします)。

 過不足も矛盾もない展開を考えることは,そう簡単ではありません。

 

2.論理性のチェックが重要

 章の展開が決まると,今度は本文の中の作業になります。

 章の中でも矛盾も過不足もない論展開を意識しなければなりません。もっとも気を付けるべきは,議論の飛躍です。

 これが非常に難しいです。やってみると,我々は普段,議論の飛躍を起こしまくっていることに気づきます。科学の世界では,議論の飛躍は許されません(誤った解を導くことになるため)。博士は,そういった論理的に科学を整理し,新たな知見を得ることができる人材ということなのだと僕は思っています。だからこそ,論理の展開を意識することは言うまでもなく重要です。

 修士論文では,このような作業はありません。というか,そこまで細かく見られることがありません。修士論文発表会

 

3.要旨,スライドと一致しなければならない(内容の変化への対応)

 卒論や修論の要旨は,はっきり言うとけっこう適当だと思います。しかも,何度も作り直すこともありません。つくりゃあ良いみたいなところがあります。だから,卒論や修論の段階では「スライドには書いてないけど要旨には書いた(だから質問せずに要旨を読んでよね)」なんていうことをする人もいます。博士論文ではそれはアウトです。情報が一致していないことがアウトです。もっと細かいことを言うと,言い方が変わるとニュアンスが変わるので,誤解される元にもなります。難しいです。

 博士論文の場合は,要旨は非常に重要です。要旨だけを見る人もいます。そういった人にも納得してもらわなければなりません。したがって,要旨の中に書いた課題や指摘は要旨の中で完結しなければならず,序論での課題設定→方法→結果→考察→結論→最終章の総合考察のいずれも欠けてはなりません。これを少ない文字数に要点だけ収めるのですから,大変さはなんとなく想像していただけると思います。

 それと,予備審査会や先生からの指導など,論展開そのものが都度変化することがあります。

 博士論文本文の情報=要旨の情報=スライドの情報

 といった状態にしておかなければならないので,いずれかが変わるということは残りのものも変化させる必要があるということです。

 修士論文の場合は,ここまで厳密に論理性がチェックされることがありませんので,そもそもこのような作業が必要ありません。

 

レベルの差がすごい

 このように書くと,修士論文にはなくて博士論文にあるものが多く,それが世間的に言われるレベルの差になっていると思いました。

 修士と博士のレベルの差はものすごいと思いますが,要求されるレベルがかなり違いますので,この差はやむを得ないと思います。しかし,博士後期課程への進学を念頭に置いている場合は,修士課程のころから博士号を念頭に置いた研究を行うことが欠かせないと思います。