博士課程に進学するかどうか迷う方は多いと思います。
その理由は,就職のことや年齢のこと,博士号をとる大変さなど,不安に思うような要素がたくさんあるし,そのような情報もたくさん発信されているからです。
では,進学するメリットは何か。そんなことを考えてみるとたくさんありましたので,お話ししようと思います。
- 研究遂行能力が身につく
- 批判的思考ができるようになる
- 情報収集能力が向上する
- プレゼン能力が上がる
- 時間のマネージメント能力が身につく
- 関心のあることに注力できる
- 博士号が得られる
- いいことはたくさんある
研究遂行能力が身につく
まぎれもなく研究能力が身に付きます。課題を見出し,課題を設定し,それを明らかにするための方法や解析方法を考え,実際に調べ,考察し,結論を出し,それを多くの人々の納得のいく形で論理的に発表する能力です。
これらの能力は,研究をしていく場合には紛れもなく重要になる能力です。修士でも研究職に就くことができる場合はありますが,間違いなく博士の方がこれらの能力は長けています。
それに,これは社会に横たわる課題をどうにかしようとする場合にも役に立つ能力です。万人が身に着けている能力ではない以上,とても貴重です。
批判的思考ができるようになる
データを見たときに,「それは確かなんだろうか。」「本当に,そのような見方しかないのだろうか。」「このようなことも考えられるのではないか。」などと,批判的思考が意識しないでもできるようになります。
データを少し疑ってみてみるということです(叩くという意味ではありません)。データをうのみにするのではなく,データに操られるのでもない。データを見て,確かなことを見つけていこうと考えることができます。そして,論理的に語ろうとする上ではあまり意味のない情報を見つけることができるようにもなります。
これは,仕事などで調査を行う必要が出たとき,あるいは解析が必要になったとき,確かな情報を見出し,他の人には出せない成果を出す可能性となる大きな能力です。
情報収集能力が向上する
情報を短期間にたくさん収集能力に長けてきます。
査読に通すときなど,論文を短期間にたくさん読む必要が出てきます。その過程で,確からしい情報をたくさん集め,グルーピングすることができるようになります。
これは僕も経験があります。知り合いが困っていた時,
「こんな情報もありますよ。」
という感じで調べたことをお送りしたんですが,
「短時間でこんなに情報を集めたんですか!?」
と驚かれたことがあります。
自分からすると全く普通なことですが,情報収集能力はかなり伸びることでしょう。
プレゼン能力が上がる
図や表と言葉をうまく織り交ぜて,人を納得させる説明をする能力が向上します。
論文や学会発表は,基本的にはだれが見ても理解されるように内容を構成します。意外かもしれませんが,論文は専門でない方が読んでも伝わるように書かれます。その過程で身につく能力がプレゼン能力です。
自分の研究が伝わらないと内容の議論はおろか妥当性を疑われるといった事態が起こるので,博士にとってプレゼン能力は非常に重要です。
このような能力は単にプレゼンを何度もすればよいというものではなく,英訳でディフェンスと言われる博士論文の審査会を通して鍛えられる能力です。
これも僕自身,無自覚でしたが,先日「図と言葉を使って,難しいことをわかりやす説明することがすごい得意な人だ」という評価をされました。以前はそんなことなかったので,まぎれもなく博士課程で鍛えられた能力です。
時間のマネージメント能力が身につく
これは僕が社会人だからかもしれません。査読に出した論文が返ってきたとき,自分が疲労するということを計算に入れつつ,限られた時間で最大限まで自分の能力を引き出すすべを身に着けることができます。
というのは,修正要求に応じるまでの締め切りが近いので,限られた時間を最大限有効に使いつつ,自分が疲労しないようにしなければなりません。その際に,いかにして進めるかということを工夫していくので,このような能力が身に付きます。
自分の作業を限りなく効率化できていくので,出せる成果が向上することと思います。
関心のあることに注力できる
博士課程は自分が選んだテーマをとことん追求できるチャンスです。
仕事で研究をするとなると,たまたま自分のしたいテーマで研究することもできることと思いますが,仕事ですので必ずしたいことばかりではないと思います。しかし,博士課程は課題設定,研究計画,方法の検討,解析,発表と先生の力を借りながら,基本的にはすべて自立してやります。関心のあるテーマについて,指導を仰ぎながらここまでできる絶好の機会になります。
僕自身,修士課程の時も好きなテーマをやりましたが,やはり内容の深まり方が違うように思います。
博士号が得られる
最後に,博士号が得られることです。
博士号があれば,大学の教員や研究所の研究者など,アカデミアに行くという選択肢ができます。普通はできないことなので,このような選択肢が得られるというだけで実はすごいことだと思います。
いいことはたくさんある
いろいろ書きましたが,このように博士課程に行くと自分のスキルとして貴重な能力が得られます。個の時代だといわれるこれからの世界。いかに自分にしか出せない成果を出していくかということを考えるうえで,博士課程で得られるこのようなスキルは,少なからず役立つことと思います。
今回の話についてはYouTubeでも述べましたのでよければご覧ください。